【ハンディにおいモニター Q&A】
【測定の留意点、具体的な手順などに関する項目】 【機器の保守に関する事項】 【におい測定に関する基礎知識】
〔1〕, 測定の留意点、具体的な手順などに関する項目 Q1.どうして電源を入れて直ぐに表示が始まらないのか? Q2.同じ対象を計っているのに、計るたびに違う強度・識別情報が表示されるのは何故? Q3.コーヒーや香水のにおいを計る方法は? Q4.濃いにおいを薄める方法は? Q5.少量の試料空気のにおいを計るには? Q6.ゼロ点を正確に合わせたい。 Q7.データをグラフにする方法 |
Q1.どうして電源を入れて直ぐに表示が始まらないのか? |
〔2〕, 機器の保守に関する事項 Q8.付着して取れないにおいを取る方法は? Q9.活性炭の汚れや寿命を判断する方法は? |
Q8.付着して取れないにおいを取る方法は? A8.清浄空気中で動作中の本機の吸引ノズルの先に、石鹸で洗ったばかりの指先などわずかな においを発生しているものを近づけると、におい強度の指示値が少し上昇します。 この時上昇が全く見られない場合は、本機の空気流通経路のどこかににおいが付着して 汚れていると考えられます。 (1),通常は清浄な空気中で長時間(数10分から数時間)吸引を続けると、除去できます。 (2),それでも取れない場合は、清浄な空気中で測定しながらノズルを外してみて下さい。 強度が下がれば、吸引ノズルかダストフィルターの汚れが原因と考えられます。 ダストフィルターを交換し、該当するにおいの成分を溶かすことのできるアルコールなどの 溶剤または水でノズルを洗浄し十分に乾燥します。 汚染原因のにおい物質の沸点が低い場合はノズルを加熱(200℃以下)することも1つの 方法です。 (3),それでも取れない時は、本機内部の汚れが考えられます。修理依頼して下さい。 Q9.活性炭の汚れや寿命を判断する方法は? A9.空気清浄ユニットの活性炭フィルターは、長時間の使用や高濃度での使用で、これ以上空気を 浄化できなくなったり、かえってにおいの発生源になることがあります。 下記の方法で活性炭の汚れや寿命を判断して下さい。 (1),空気清浄ユニットを通した空気と清浄な空気のにおい強度を測定、比較した場合、 ユニットを通した空気の方が明らかに高い指示値を示し、清浄空気を長時間吸引しても 低下しない。 (2),においのある空気中で測定しながら、空気清浄ユニットを接続してもにおい強度が 低下せず、清浄空気を長時間吸引しても低下しない。 (3),空気清浄ユニットの活性炭を直接嗅いではっきりとにおいがし、清浄空気を長時間吸引 してもにおいが消えない。 |
〔3〕, におい測定に関する基礎知識 Q10.においの強度表示値と、臭気強度、臭気濃度、臭気指数との関係は? Q11.Q10をもっと具体的に、例えば強度表示が例えば300の時は、臭気強度などの官能表示法による数値が いくらであることを表すのか? Q12.識別情報の数字は何を表わしているの? Q13.Q12をもっと具体的に実際に現場で(複合臭を)計測したときに得られるこの識別参考値の意味はどのように 考えればよいか? Q14.温度や湿度は測定値にどのような影響がありますか? |
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Q10.においの強度表示値と、臭気強度、臭気濃度、臭気指数との関係は? Q10.ハンディにおいモニターにおけるにおい強度は、臭気強度、臭気濃度、臭気指数とは 直接の相関関係はありません。 臭気強度、臭気濃度、臭気指数はいずれも臭気の強さを人間の嗅覚を用いて数値化する 臭気官能試験による臭気の表現方法です。 一方、ハンディにおいモニターにおけるにおい強度は、においを構成している化学物質に 着目し、その濃度で表示する成分濃度表示法の1種として分類される表示方法です。 臭気強度表示法は臭気の強さに着目し決められた手順にしたがって数値化する方法であり、 日本では6段階臭気強度表示法(表参照)が広く使われています。 においを嗅いでその場で数値化できる利点は大きいが、測定レンジが狭いという欠点があり、 臭気濃度表示では測定できない低濃度臭気の測定に有効です。 尚、臭気濃度(Y)と物質濃度との関係はY=k・logX+αで表示されますが、kとαは物質ごとに 異なる定数です。 |
臭気強度 | 判定尺度 |
0 | 無 臭 |
1 | やっと感知できるにおい(検知閾値濃度) |
2 | 何のにおいかわかる弱いにおい(検知閾値濃度) |
3 | 楽に感知できるにおい |
4 | 強いにおい |
5 | 強烈なにおい |
臭気濃度は、臭気の広がりの程度を表わす尺度であり、広幡性表示とも言われます。 この臭気濃度とは、単に臭気の濃度という意味ではなく、1つの単位でありその臭気を 「無臭の清浄な空気で希釈した時、ちょうどにおいを感じなくなる時の希釈倍数」として 定義されています。 尚、この臭気濃度(S)を次式で変換したのが臭気指数(N)です。 人間の嗅覚は刺激量の対数に比例するというウェーバー・フェヒナーの法則から、 臭気濃度より臭気指数のほうがより人間の感じる感覚量に近い尺度として用いられます。 N=10×logS 一方、ハンディにおいモニターにおけるにおい強度(S)は、ガスを含まない清浄空気中の ガスセンサーの抵抗値(RO)とガスを検知したときの抵抗値(R)から求められる感度(RO/R)を 2つ異なる特性を持ったガスセンサーA,Bについて測定し、それぞれの感度をX,Yとした場合に S=√(X-1)2+(Y-1)2として算出したものです。 この関係から汚れた空気中のゼロ点を調整した場合、におい強度の測定精度が大きく低下 することがご理解いただけると思います。 Q11.Q10をもっと具体的に、例えば強度表示が例えば300の時は、臭気強度などの官能表示法に よる数値がいくらであることを表すのか? A11.複合臭を計測する場合に色々な点からみて、この質問にお答えするのは不可能です。 下記の説明でその理由をご理解頂く必要があります。 300の表示をするときでも、その時に測定しているにおいの種類によって「強烈なにおい」と 感じる場合もあれば「やっとわかるにおい」というレベルの時もあります。 においというものは Aの理由を見るだけでも、本機の表示値と官能値の相関を得ることは出来ない説明に |
臭気強度 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 |
物 質 名 | においがあるのが やっとわかる レベル |
何のにおいかが やっとわかる レベル |
楽に検知できる レベル |
強いにおい | 強烈なにおい |
メチルメルカプタン | 0.0001ppm | 0.0007ppm | 0.004ppm | 0.03ppm | 0.02ppm |
硫化水素 | 0.0005ppm | 0.006ppm | 0.06ppm | 0.7ppm | 8ppm |
トリメチルアミン | 0.0001ppm | 0.001ppm | 0.02ppm | 0.2ppm | 3ppm |
アセトアルデヒド | 0.002ppm | 0.01ppm | 0.1ppm | 1ppm | 10ppm |
イソブタノ−ル | 0.01ppm | 0.2ppm | 4ppm | 70ppm | 1000ppm |
キシレン | 0.1ppm | 0.5ppmppm | 2ppm | 10ppm | 50ppm |
ノルマル酪酸 | 0.00007ppm | 0.0004ppm | 0.002ppm | 0.02ppm | 0.09ppm |
トルエン | 0.9ppm | 5ppm | 30ppm | 100ppm | 700ppm |
イソ吉草酸 | 0.00005ppm | 0.0004ppm | 0.004ppm | 0.03ppm | 0.3ppm |
青字で示した部分にご注目願います。 物質量としてほぼ10000倍の差がある、トルエン5ppmとイソ吉草酸0.0004ppmが、官能的には 同じレベルであることがわかります。 この2つの物質のようにレベルの違いの大きい関係のものが多くあり、それらが複雑に複合 している複合臭では、官能値と物質濃度との相関は得ようがないと言えます。 Q12.識別情報の数字は何を表わしているの? A12.前項A2でご説明したセンサーA,Bそれぞれの感度X,Yからにおい識別の値(C)は、 C=tan-1{(Y-1)/(X-1)}から算出されるもので、下記の図から感度とにおい強度、 におい識別情報の関係がご理解いただけると思います。 またハンディにおいモニターがどのようにしてにおいを識別しているかもご理解いただけると 思います。尚、参考に各種のにおいについて大まかな目安を示します。 |
におい成分 | 臭気強度 | 物質濃度 | 識別情報参考値 |
オルトキシレン | 3.5 | 5.7ppm | 8〜29 |
アセトン | 2 | 110ppm | 30〜54 |
イソ吉草酸 | 5 | 0.25ppm | 22〜58 |
ノルマル酪酸 | 5 | 0.27ppm | 36〜60 |
プロピオン酸 | 5 | 0.97ppm | 35〜60 |
イソバレルアルデヒド | 5 | 0.18ppm | 35〜63 |
エタノール | 3 | 100ppm | 41〜67 |
アセトアルデヒド | 3.5 | 0.46ppm | 36〜69 |
硫化水素 | 3.5 | 0.21ppm | 36〜78 |
メチルメルカプタン | 3.5 | 0.16ppm | 41〜77 |
ノルマルバレルアルデヒド | 5 | 0.62ppm | 41〜66 |
上記の参考値(識別情報参考値)は、様々な測定環境を考慮し、誤差を大きく見ております。 実際の測定ではさらに狭い範囲で表示されます。 |
Q13.Q12をもっと具体的に実際に現場で(複合臭を)計測したときに得られるこの識別参考値の 意味はどのように考えればよいか? A13.まず、本機のメインの機能は、においの相対的な強弱を数値で示すことをご理解下さい。 その上で、本機では2つのセンサを搭載することにより、においの識別の参考となる数値として、 classificationに数値を表示するkとをサブ機能として提供しています。 この表示の原理は、特性の異なる2つのガスセンサを配置することで、あるにおい物質に 実験室で単一物質を発生させてそれを計測しますと、「この物質の時はこの数値」、という 複合臭を計測したときに、識別参考値として得られる数字をそのままA13.の表に当てはめて、 複合臭の測定の際に、この識別参考値を活用していただく方法としては、測定の結果、表示 ある臭いの脱臭効果判定をする際に、脱臭前の強度測定の際に識別参考値にも注目しておく。 また、アルコールなどで脱臭するマスキングという手法があります。この場合、においレベルは 結論としては、この識別参考値により複合臭に含まれる臭い物質を特定することはできません。 |
☆神栄梶@ハンディにおいモニター OMX-SR 取扱説明書より抜粋 |
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